温泉の正しい入り方

編集部 最近発券は自動販売機になりました。日帰りは。

伊藤 そうですね。番台があるのはやっぱり上山ですかね。共同浴場でちゃんと。下大湯も一応券売機もありますけど、あと新丁鶴の湯も。

編集部 男湯と女湯が見える?

伊藤 見えるっていうか、一応そこからも。料金所があって、ガラッって入ると、券売機もあるんですけど、下大湯とかだとちゃんと人が。あと湯上がりのことで言えば、小野川行ったときは必ずラジウム温泉卵を買って帰る。おいしいので。

編集部 ラジウムね。長岡さんは湯上がりは牛乳派だとか?

長岡 山辺温泉のやまべ牛乳のみですね。あとはだって明治とか、そんなメーカーの牛乳飲んでも別にどこでもいいので。

編集部 そうか。ビールが欲しくなるとかそういうのは。

長岡 ビール欲しいですよね。

伊藤 あと海老鶴だと、ほんとにちっこいところなので、湯上がり処で普通に、うちにあるみたいにテーブルとイスがあって、部活のときの給水器みたいなピッてやってチャーって出てくるやつあるじゃないですか。ああいうのがあって、お水飲んだりできるんですね。座って湯飲み茶わんで。漬物とかお客さんが漬けてきたのがどんと置いてある。どうぞって。それを食べたりできるっていう、そういう光景があります。

長岡 付け加えれば、そばとかラーメンとかとも共通するんですけど、そんなにうまくなかったりもする。昔のラーメン屋さんって。ただ懐かしさだけだったり、郷愁だったり、ノスタルジーだけだったもするんですよ。
でもそういう古い店って大事だなって思うんですよ。じいちゃん、ばあちゃんがやっているような。それって地域のその場、その場所の風景ですよね。それは温泉も一緒で、山あいにたたずんでいる温泉宿の風景だとか、そういうのって、すごく大事だなっていうふうに思うんですよ。だからその時に、ほんとに人気のある温泉場はいいんですけど、それなりに課題は抱えているんでしょうけどね。
やっぱり古くから続く一軒宿、日帰り客を受け入れている一軒宿を探して行ってほしいなっていうふうには思いますね。

編集部 自分の好きな温泉場作ってね、私はここだっていうね。そういうのを作ってほしいね。

伊藤 私も長岡さんと同じで、古い温泉っていう言い方をしちゃうとあれなんですけど、快適さとか、そういうものを兼ね備えた温泉場という方が、みんな当たり前に知っていると思うので、そこを知った上での本来の姿の温泉場っていうところにやっぱり行ってほしいというのがあります。
そうやって両方の良さを分かった上で行ってほしいですし、本来のお湯っていう言い方するとあれですけれども、やっぱりお湯の力みたいなものは。入った時に絶対的に体感として。

長岡 温泉のパワーがね。

伊藤 あると思うんですよ。うん、そういうお湯の力っていうのを味わって欲しいというか。

長岡 成分とか泉質とか分かんなくても。

伊藤 そうですね。体感として。

長岡 やっぱり匂いもそうだし、お湯の何だろう、重さ、成分が濃いのは重いので、体にずっしりお湯が来る。

伊藤 来るっていうか。

長岡 それを多分。

編集部 感じるわけだ。

長岡 そんなに温泉のこと知っている、知らないとか、関係なく感じられるものだと思うので。

伊藤 体感としてだって絶対感じられるものってあると思うので、そういうのをやっぱり知ってほしいですね。

長岡 あと施設はともかくとして、お風呂に入ってそのお湯が気に入ったと思ったら、覚えなくても別にいいので成分表を見て、泉質と残留成分量と。

伊藤 成分の濃さですね。あとpH値(pH3未満は酸性、3~6弱酸性、6~7.5中性、7.5~8.5弱アルカリ性、8.5以上はアルカリ性となり、肌あたりが異なる。)

長岡 この二つはちょっと見ててもらう。あとはかけ流しか循環か。これをちょっと気にしてみてもらえると、自分の好きな温泉ってこういうのだっていうのが分かる。

伊藤 分かりますよね。

長岡 じゃないかなって思います。

伊藤 今さらですけど、もう終盤になってあれなのにね、合う・合わないってよくありますけれども、さっきの重い温泉が駄目な人もいるわけですよ。
例えば塩分がいっぱい成分が濃い温泉だとします。例えば自分はどっちかというと、むくみやすいとか、例えばね、あんまり腎機能がお元気でないような方とかが入ったりすると、その塩分量の濃さに反応して、一気に血管も広がって、入ったすぐあとなのに、「えっ、むくんでる?」みたいな感じで、パーンってふくらんじゃうっていうのかな、体が膨張しているような感覚があるんですよ。
でもそれは一晩経つと、逆にしっかり吸収して、疲れが取れたりとかっていうのもあるんですけど、人によってはそういうところに入ると、逆によく聞く湯あたりしちゃうってありますよね。でもそれはその温泉が悪いんじゃなくて、自分の体質。

長岡 入り方の問題だったりね。

伊藤 うん、入り方。だから結局合う温泉・合わない温泉っていうのも、自分の体質をよく知っているかどうかっていうことに、最後は起因すると思うんですよ。その上で、そのお湯の性格を分かって入ってもらうと一番いいと思いますよね。

重い温泉っていうのは、得てしてほんとにもうさっきも言ったようにパワフルなので、あまり長湯をしなくても、恩恵を十分に得られるんです。通常の女の人とかだと、特に長湯をしちゃって、逆に湯あたりして、「あの温泉ああだっけ」って、温泉が悪者にされちゃうとかわいそうなので。そういう自分の体質も知った上でというのは。

長岡 お気に入りの温泉を見つけてほしいなというふうに思いますね。

編集部 いやいや、お話すごく面白かったですね。お二人には長い時間ありがとうございました。


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(出典:『やまがた街角 第32号』2018年発行)

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