今のナナビーンズになる前の丸久松坂屋が昭和四十八年にオープンした時と同じ年に開店した喫茶店。当時まだ喫茶店は「みどり」や「ポール」など七日町でもわずかしかなかった。店名の「白十字」は、店主の山崎惠子さんのご主人の悟郎さん(故人)が終戦までいた中国大連のフランス租界にあったカフェの名前という。
喫茶店と一緒に「銀座堂電気屋」も始めたが、悟郎さんが亡くなった平成十四年からは電気屋をやめ喫茶店だけにした。店もそれまでよりも明るく改装、惠子さんの再出発がスタートした。
開店以来から通う常連客は高齢となり少なくなったものの、街のど真ん中だけに、入社してからずっと通っているというサラリーマンや、ひと息入れにやってくる周辺の商店主、用足しや買い物帰りの主婦など、常連客が惠子さんと懐かしい話に花を咲かせている光景もある。
コーヒーは、優しい香りと柔らかな味わいのネルドリップで、これにケーキをセットでいただくと極上のひとときが楽しめる。定番のカレーやトーストの軽いフードメニューもある。
白十字には惠子さんの優しい笑顔に会いに行きたくなるのは勿論、思いがけなく懐かしい人に出会えたりする密かな楽しみもある。ずっと時間が繋がってきている空間、それが白十字だ。
喫茶 白十字
山形市七日町2−7−15 (1F)
TEL 023-622-7774
営業 8:00〜19:00(土日は11:00〜17:00)
定休日 無休(元旦のみ休み)
(出典:『やまがた街角 第85号』2018年発行)
●『やまがた街角』とは
文化、歴史、風土、自然をはじめ、山形にまつわるあらゆるものを様々な切り口から掘り下げるタウン誌。直木賞作家・高橋義夫や文芸評論家・池上冬樹、作曲家・服部公一など、山形にゆかりのある文化人も多数寄稿。2001年創刊。全88号。