万年筆を使うには、まずインクを入れる必要があります。
インクの充填は、おもに万年筆の仕様ごと、吸入式タイプとカートリッジやコンバーターを使用するタイプに分かれます。
吸入式は、万年筆に吸入機構が内蔵されていて、ボトルから万年筆内部にインクを吸入する、昔ながらの方式です。
カートリッジは最初からインクが詰まっている使い捨ての規格品、コンバーターはインク吸入器のことです。カートリッジとコンバーターの両方を使用できる両用式万年筆が、現在もっとも一般的になっています。
カートリッジとコンバーターはメーカーごとに形状が異なります。原則として、万年筆と同じメーカーの製品を装着してください。
カートリッジインクを使う
キャップと軸をはずします。カートリッジの先端に穴が開く感覚があるまで、まっすぐに差し込みます。
回しながら差し込むと、万年筆の内部をいためてしまうことがあるので注意してください。
コンバーターを使う
- キャップと軸をはずして、まっすぐに差し込みます。コンバーターの端のつまみ(ノブ)を左に回すと内部のピストンが下がっていくので、一番下まで下ろしきります。
- ペン先が完全に隠れるまでボトルインクに浸し、つまみを右に回すと、ピストンが上がりインクが吸入されます。空気が混入することが多いので、コンバーターに気泡が入らないよう2~3回吸入を繰り返してください。
- ペン先や首軸に付着している余分なインクをティッシュなどで拭き取ります。
書くにあたって
- ペン先の刻印面を表にして、ペン先が紙と平行になるように持ちます。
- おおよそ 45〜60°の角度、ほかの筆記具を使う時よりやや寝かせ気味に持つと書きやすくなります。筆のように立てて書くと、インクが出にくく、ペン先もいたみやすくなります。
- 紙にインクがにじんでいく「毛細管現象」でさらさら書けるのが万年筆の特徴です。筆圧をかけずとも、ペン先を紙に当てているだけでインクが流れてくる仕組みになっています。逆に筆圧が強すぎると、うまく書けないだけでなく破損の原因になります。
- 使用しない時は小まめにキャップを閉めてください。乾燥してインクの出が悪くなり、詰まる原因になります。万年筆のキャップには回しながら外すネジ式と真っすぐ引き抜く嵌合(かんごう)式があります。
洗浄・お手入れについて
容器に水を用意します。インクが溶けやすい、人肌くらいのぬるま湯が最適です。
カートリッジインク
- 軸をとりはずしてカートリッジを引き抜きます。
- ペン先を完全に浸します。インクが抜けて水が汚れていくので、何度か交換しながら通常1〜2時間つけおきします。しばらく万年筆を使用していない場合は、一晩おくとより確実です。
- 容器から取り出し、首軸からペン先に向けて流水で洗い流し、柔らかい布やティッシュなどで水気を切って、ペン先を乾かします。
コンバーター
- インクがまだ残っていたらボトルに戻します。
- 軸をはずし、コンバーターを装着したままにペン先を容器につけ、インクを吸入する要領で水を出し入れします。何度か水を交換しながら、インクが抜けるまで繰り返します。
- 汚れがひどい場合は、コンバーターを外したあと、カートリッジインク 2. と同様にします。
- カートリッジインク 3.と同様。
ペン先の字幅(太さ)の種類
メーカーによって多種多様なバリエーションが用意されています。
用途や好み、筆圧に合った字幅を選ぶことが大切です。
太くなるほどなめらかな書き味になる一方で文字がつぶれやすくなり、細くなるほど引っ掛かりを感じる傾向があります。
代表的な字幅
極細(EF:エクストラファイン)
細い線がシャープに書け、システム手帳や簿記などへの細かい書き込みに最適
細字(F:ファイン)
ノート、日記、手紙など幅広い用途で使えます。近年もっとも人気がある字幅のひとつ
中字(M:ミディアム)
普段使いもでき、かつインクの色味や濃淡、万年筆特有の書き味を堪能できる定番種
太字(B:ブロード)
宛名書きやサインなど。のびのびと楽しく書きたい方におすすめ
気長にお付き合いいただけるとうれしいです
万年筆は最初は使い方がわからなくて手間がかかるかと思いますが、独特の書き味、インクの濃淡、豊富な色数が魅力です。その日の気分で色を変えるなど様々な楽しみが広がります。
また、使い込むほどに自分の書き癖に馴染んで、からだの一部であるかのように気持ちよく字が生まれる、その人だけの1本へと育っていきます。構造上、最低限の基本的な使い方はありますが「これが正解」というわけではありません。握り方も原則自由です。使い方しだいで表現の可能性も無限に広がります。
小まめなメンテナンスで長い期間お使いいただける筆記具です。あまり気を張らず、気長にお付き合いいただけるとうれしいです。
(八文字屋・東根智広)