本当に田んぼのど真ん中にある。看板を頼りに田んぼのあぜ道を進んで行くと、集落のはずれにひょっこりと現れる。内湯もけっこう広いが、露天は池のような大きさの岩風呂だ。湯の表面を見た感じは黒いように見えるが、手ですくうと、わずかに茶色く濁った湯だ。浴槽の内側が黒くなっているのは、それだけ成分が濃い証なのだろう。かすかに硫黄泉の匂いもする。
内湯は熱めで、慣れないと最初から入るのはきついかも。露天は、湯口から近いところと離れたところで温度が違うので、好きな温度のところを選べる。足腰の調子が悪い時は、熱めの内湯で半身浴をすると効くようだ。温泉で作った塩も売っているくらいだから舐めるとしょっぱい。かといって湯上りに肌がペタペタするわけでもない。正真正銘のかけ流しで、もったいないほどザァーザァーと流れているので、爽快感と清潔感は他に類を見ない。
洗い場は昔の浴場を思い出すようなレトロな感じ。石張りの床も湯で黒くなっている。常連の客がほとんどだが、ケンミンショーで渡辺えりさんが紹介したこともあってか観光客らしき姿もちらほら。農作業の足腰の疲れもすぐに取れるような湯だ。惜しむらくは、せっかくの大きな露天風呂なのに、田んぼのど真ん中で見通しが好過ぎるため塀で囲ってあって、湯に浸かりながらの眺望が良くない。
ある時、内風呂が使えず露天だけという理由で料金を安くしてくれたことがあった。トラブルがあって一旦、内湯を全部抜いて掃除をしたので、湯が溜まるまで時間がかかると説明された。その都度、きちんとそういう対応をするということで、かえって安心できる施設であると感じた。毎日、営業終了後に湯を抜いて掃除をし、また新たに溜めるそうで、施設の方の日々の労力と矜持に頭が下がる思いがする。
風呂上がりのロビーも広く、お決まりの牛乳もある。料金も安いし、もっと家の近所だったら良かったなと思わせてくれる温泉である。
■所在地:山形市百目鬼42-1
■電話番号:023-645-9033
■アクセス:山形駅から車で20分程度
■備考:【泉質など】
ナトリウム塩化物温泉 pH7.5
温度 54.8℃ 加水加温は一切無し
源泉かけ流し(放流式)
駐車場あり
※入浴料:大人350円、子供(小学生)150円
※営業時間 午前6:00~午後10:00
休業日 毎月第1月曜日
(出典:『やまがた街角 第84号』2018年発行)
●『やまがた街角』とは
文化、歴史、風土、自然をはじめ、山形にまつわるあらゆるものを様々な切り口から掘り下げるタウン誌。直木賞作家・高橋義夫や文芸評論家・池上冬樹、作曲家・服部公一など、山形にゆかりのある文化人も多数寄稿。2001年創刊。全88号。