2021年6月に創刊40周年を迎えた「BE-PAL」は、新規読者を着実に増やしながら、完売号が続出する人気を保っています。しかし創刊号は、そのチャレンジングな表紙ゆえに批判されたとのこと。
密を避けて楽しめるレジャーとしても注目を集め、キャンプブームがますます広がりを見せる中、同誌はいかに時代に合った”ライフスタイル”を提示してきたのでしょうか。「BE-PAL」編集長・沢木拓也さんに寄稿していただきました。
※本記事は「日販通信」2021年5月号「編集長雑記」に掲載されたものです。
※記事の内容は、執筆時点のものです。
ブームは30年周期でやってくる!?
ビーパルは2021年6月で40周年を迎えました。私がちょうど10歳の時に創刊したわけです。1981年当時、キャンプといえば登山の一部として行なうか、軍隊式野営の流れを汲む野外教育が主流でした。そんな中、ビーパルはどのように創刊されたのでしょう。
つい先日、40周年企画で創刊編集長である中村滋さんにインタビューしました。創刊号の表紙は、鱒のイラストが描かれたタンクトップを着た女性のバストアップ。今じゃ考えられない表紙です。実際に、当時もこんなのアウトドア誌じゃないと各所から叱られたとのこと。
登山や釣りといった専門誌が主流だった中、ジャンルすら判然としないビーパルが批判されたのは当然かもしれません。中村さんは、もっと身近なアウトドア雑誌を作ろうと考え「自然は仲間。自然と友達になろう。自然を手でつかもう」というコンセプトを決め、表紙には「Outdoor Life Magazine」と謳いました。アウトドア専門誌ではなく、ライフスタイル雑誌なのだという宣言です。
創刊号を読み返すと、既に「1DKアウトドア」と名付けておうちキャンプ企画をやり、仕事の後はひとりオートキャンプという記事もありました。道具類こそ進化したものの、やっていることは今も同じ。40年間、私を含め9人の編集長がいながら、キープコンセプトし続けてきたということです。
ちなみに、私が最初にビーパルに出会ったのは中学3年生の頃でした。当時、長良川河口堰の反対運動がニュースでも取り上げられ、日本中のカヌーイストが集結していました。ビーパルは、この運動を全面的に応援している珍しい雑誌でした。純粋だった15歳の私は、今も連載中の野田知佑さんのエッセイを愛読していて、反対運動はもちろん、アウトドアの魅力にどんどんはまっていきました。
創刊10年ほどたった頃、第1次キャンプブームが始まります。きっかけは、92年に国家公務員の完全週休2日制が実施されたことが挙げられます。一般企業でも週休2日制が広がり、サラリーマンにも時間的な余裕ができ、ファミリーで週末に遊ぶ手段としてキャンプが選ばれたのです。
日本オートキャンプ協会のデータによると96年にはオートキャンプ人口は最高の1580万人を記録。ビーパルも売れに売れ、40万部を超えていました。パジェロをはじめとしたRV車もバカ売れし、キャンプ場は人であふれていました。
それから約30年がたち、第2次キャンプブームがきました。オートキャンプ人口は5年以上連続で増え続け、850人万を超えました。これはゴルフ人口より多く、レジャーの大きな一角を担うようになりました。有給休暇取得の義務化も後押しとなり、さらにコロナ禍でその動きは加速。アウトドアは密になりにくい、子供のストレス解消に最適だと、一気にブームは広がっていきました。SNSでキャンプシーンを投稿する人も急増、ガレージブランドを立ち上げる人も増え、ブームはさらに広がりを見せています。
ビーパルも、昨年はソロキャンやおうちキャンプといった、新しいキャンプの形を提案。さらに新規読者を取り込むため、アウトドアで使いたくなる付録の開発にも力を入れてきました。その効果は絶大で、完売号が続出。昨年度は平均売上率が80%を超えました。それに伴い、読者年齢も徐々に下がってきました。新規読者が確実に増えてきているということです。40周年記念号も、確実に完売するはずです。
次なる30年、どんな世の中になっているのか想像すらできませんが、「自然と遊べる」世の中であればと。そしてどんな形であれ、ビーパルが残っていたらいいなと。その時私は80歳。自然豊かな田舎で、のんびり隠居生活を送っていると信じております。
(「日販通信」2021年5月号「編集長雑記」より転載)
BE-PAL(ビーパル)2023年04月号
発売日:2023年3月
発行所:小学館
価格:1,250円(税込)
JANコード:4910176310437