温泉好きになるためのポイントとは


編集部
 温泉そのものが好きなのか、あるいは温泉場のロケーションとかに魅せられるのか、その辺でどっちがどう?重きを置くか、その辺についてはどうですか。

伊藤 個人的には、施設よりもお湯そのものと、あとはそこにプラスしての自然の光景が広がっているかどうかっていう方が一個人として見ると比重はあります。

長岡 私は露天が好きですね。露天があるところに行きたいなと。あとはやっぱり建物。

伊藤 ああ、そうか。建物。

長岡 建物というか、建物も含めた歴史ですかね。山の中でもいいんですけど、古くから愛されている温泉のほうが興味があるというか、いいなと。もちろんそこには泉質もあるんですけどね。個人でいきたいなというのは、昔からある古湯とか、そういうところですかね。

伊藤 そうですよね。行き着くところはイコール自噴泉とかになっていて、そうすると古い歴史があって、それこそちゃんと発見伝説があってね。いろんなお坊さんとか、キジとかサルとか動物が出てきて・・・。

長岡 由来がね。

伊藤 うん、由来があってというのもワンセットになっているところが多いですよね。小野小町っていうのもありますよね、一つ。

長岡 うん。

伊藤 そうですね謎の多い絶世の美女。

編集部 ツルが痛めた足を癒していたとかね。

長岡 伝説とか、自然とか、そういう歴史の中で温泉がわき上がってきているという場所の方が、やっぱり建物が古いとか新しいだけじゃなくて、その存在そのものがやっぱり魅力的かなと思うな。

伊藤 しかもそういうところって、開湯の由来っていうのも、温泉組合のかのホームページ見ると、代表として挙がっている説が記載はされているんですけど、聞いていくと、いや実はね、もう一つこういう説も、あんましメジャーじゃないんだけど、こういう説もあってねみたいな、それを聞くのも楽しい。何かこう、萌え萌えしますよね。
うわ〜、何だこんなのもあったんだって思える、そういう楽しさもある。

長岡 それと、やっぱり温泉と言えば、泉質も決め手かな。私は泉質とイコールなんですけど、温泉というともう蔵王。温泉イコール硫黄泉というのがもう染み付いているので、いろんな温泉入りますけど、やっぱり硫黄臭がするとホッとするというか、ほんとに芯からホッとします。

伊藤 いつまでも匂い残っているのが嬉しいみたいな、クンクンって・・・。

長岡 入った甲斐あるっていう。

伊藤 帰りしなとかもフッと動いた時にその香りがすると、ああ残ってる、残ってるみたいな感じがして、何かこううれしくなっちゃう。

長岡 蔵王温泉に行って、上がって、体当然拭くんですけど、最初に来た下着があるじゃないですか。アンダーウェアがね。それは当然その日着替えるわけですね。次の日は洗濯するじゃないですか、それを。そうやって洗濯して、もう一回着ても残っているんですよ。

伊藤 残ってる、残ってる。

長岡 ね?それで、フッと忘れていて、Tシャツなんかパッときると、あっ、何だこれっていうだけでも幸せになりますからね。

伊藤 あの匂いだ、みたいな。

長岡 あっ、これいつだっけみたいな。プチ幸せ感がありますね。まあそういう意味で言うと、もう硫黄が徹底的に好きですね。

編集部 そうだね。昔、湯治で蔵王なんかにいくと一週間とか十日でしょ?

長岡 はい。湯治文化っていうのもありますよね。

伊藤 湯治っていうと私はやっぱり蔵王もですけど、肘折も外せないですね。

編集部 肘折ね。昔それこそ湯見舞いというのがあったよね。連泊している湯治の友達とかを尋ねて談笑するというか。

伊藤 湯見舞い。素敵な言葉、へー、いい言葉。

編集部 自分が湯治にいっているわけじゃないけど、湯見舞いをしてきたなんて言って。

伊藤 顔出しに行く。

長岡 顔出して、差し入れとか。

伊藤 あらー。

長岡 湯治って基本、自炊だからね。うちのばあちゃんも必ず年二回ぐらい、友だちと一週間ぐらい肘折に行っていましたね。

伊藤 うちのばあちゃんも行ってました。

編集部 自炊と関係あると思うけど、肘折には名物の朝市がありますね。

長岡 でも、蔵王のほうが観光化が早かったから、様相が違います。

編集部 ああ、そうですね。

伊藤 スキー場もあってね。

長岡 だから蔵王では湯治宿が早くなくなったんじゃないですかね。だから湯治客はどうしても肘折に行ったんじゃないかなとは思いますけど。

>>>vol.2に続く

>>>vol.1
>>>vol.2
>>>vol.3

*2020年5月に新庄市に「天然温泉どんぐりの湯」が開設されました。

(出典:『やまがた街角 第32号』2018年発行)

●『やまがた街角』とは
文化、歴史、風土、自然をはじめ、山形にまつわるあらゆるものを様々な切り口から掘り下げるタウン誌。直木賞作家・高橋義夫や文芸評論家・池上冬樹、作曲家・服部公一など、山形にゆかりのある文化人も多数寄稿。2001年創刊。全88号。


蔵王温泉大露天風呂